りんご記念日応援団 松原秀行さん

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児童文学作家の松原秀行さんは、幼稚園のころに英語を習い始めました。意味もわからず歌った英語の歌は、空耳アワーの世界。当時の体験は、のちの松原さんと作品にどんな影響を与えたのでしょうか?

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▼意味不明だった英語歌詞が、あるとき突然意味をなした「りんご記念日」
幼稚園の年長さんのころ、ぼくはネコと遊んでいれば「わーいわーい!」な子どもだった。しかし親は「いまのうちから英語を勉強させれば将来は外交官になれるかもしれない」などと余計なことを考えたらしく、毎週土曜日、英語学校に通わされるハメになった。

教室ではよく、意味もわからずに英語の歌を歌っていた。そのなかにこんなのがあった。「♪なんとかかんとかなんとかで~」のあと、こうつづくのだ。「♪れーでーやーろーばっけんはい~」と。まるで呪文みたいだ。かんじんの英語はまったく身につかず半年ほどして退校したあとも、そのフレーズだけはずーっと、意味不明のままぼくの耳にこびりついていたのだった。

話はトツゼン高校時代に飛ぶ。
同世代のみんなと同じく、ぼくもビートルズに熱狂。レコードを聴きまくっていた。高二のときにでたアルバムが「リボルバー」だった。そこに収録された「エリナー・リグビー」は、孤独のなか教会で死んだ女性を歌いあげた哀切きわまるバラードだったが、とある一節がふと耳にとまった。歌にでてくる「マッケンジー神父(ファーザー・マッケンジー)」の名前が、「はざまけんじ~」と聞こえたのだ。ほとんど空耳アワーだ。悲しい歌なのに、ぼくは笑いをこらえきれなかった。(ついでながら、ぼくの本『パスワード幽霊ツアー』に登場する人物「間ケンジ」は、じつはここからとった名前なのでした。(^_^;))
そんなことがあったからかどうか。あの呪文ソング「♪れーでーやーろーばっけんはい~」の意味が、そのころになって忽然と判明した。
「そ、そうか! アレは、レッド・イエロー・ブラック&ホワイトだったんだあ!!」と。積年の謎はこうして、ビートルズの歌とともに氷解したのだった。

なお4月20日はぼくの誕生日。30年来わずらっている花粉症が毎年、この日ぐらいに雲散霧消して気分はグッド・デイ・サンシャインな記念日だ。