2001年10月号 私を成長させてくれた研修旅行に感謝 |
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瀋陽空港に到着したあと、バスで約4時間ほどかけて甘旗卡に向かった。窓越しに見える風景(これが私にとっての初めての中国の景色になったわけだが)に、一昔前の日本にタイムスリップしたような錯覚に襲われた。人々は西瓜や玉蜀黍を路傍に並べ、家族で輪になって話している。三輪のトラックが野菜を積んで走っている。時間がゆっくりと流れている。これを見て「ああ、いいなあ」と素直に思った。ここでならばせかせかとした日本より、人間らしい生活ができるのではないかと思った。 しかし、途中でトイレ休憩をした時の衝撃は一生忘れることができないであろう。そこで私が目にしたものは、日本の生活からは思いもつかないような水のないトイレ、しかも穴が二つ空いているだけというものであった。この瞬間から私は日本に早く帰りたいという思いを抑えることができなくなった。その思いはホテルに着いてからますます強くなることになる。私たちが泊まったホテルは甘旗卡の町で一番いいホテルだったが、水回りは暗いし、水道水は茶色だし、トイレは一応水洗ではあるものの水がちゃんと流れない。入浴時間も決まっており、その時間以外はお湯が出ない。しかも入浴時間でも断水がある。結局お風呂には入れなくてショックを受けるやら、気持ちが悪いやら、もう散々で早く日本に戻りたくて仕方がなかった。 ホテルの部屋で泣きそうになりながら友達と文句を並べていた時に、国際文化フォーラムの水口さんが言った。「そうやって、自分の価値観ですべてを判断していたら、ここではやっていけないよ。内蒙古の人たちは、日本人と違って、ほかのところに価値を見出しているんじゃないかな」って。 この言葉を聞いて、私はさらに大きなショックを受けた。自分はなんて狭い考え方で生きているんだろうと思った。中国の生活に自分が適応できないからといって文句を言うのは自分の価値観を押しつけているだけで、彼らの生活を否定していることになる。もし日本に来ている外国人が、日本の何々が悪いとか汚いとか言っているのを聞いたら、私は大層気分を悪くするだろう。そんな簡単なことに、十八歳にもなった今気づいたことを恥ずかしく思うと同時に、水口さんやこの旅行に行くことを賛成してくれた家族、この研修のために尽くしてくれた全ての人に感謝したい。 松戸国際高校3年
塚原あやか |
塚原さんは、5泊6日の「高校生のための中国研修旅行」(2001年実施)に参加し、甘旗卡第二高級中学の生徒たちと交流しました。所属は2001年当時のものです。 |