りんご記念日応援団大砂嵐金崇郎さん

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初のエジプト出身となる大相撲力士、大砂嵐関。
大嶽部屋に入門した当初は、理由より先に「すみません」と謝る日本の文化に戸惑いました。親方に毎日怒られたそうです。それが今では......。

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▼目で見て、心を開いて、いろいろな文化を知ろう
3年前、どうしても力士になりたくて日本に来ました。外国人力士がいない部屋のリストをもって。そのとき日本語はまったくできなかった。だから、日本語のわかる友だちといっしょに1部屋ずつ毎日訪ねて、稽古してもらったんです。どの部屋に行っても断られました。最後の7部屋めが、この大嶽(おおたけ)部屋でした。

それまでの毎日の稽古で、疲れもたまっていたし、太ももの筋肉が切れてもいたしで、身体はぼろぼろでした。だから、相撲をとってもとっても負ける。でも、そのたびに「もう一回お願いします」を繰り返しました。気がついたら3時間経ってました。きっとだめだなと思っていたのに、親方は「OK」と言ってくれたんです。ぼくのハートがいいと。ホントに嬉しかった。

次の日からトイレ掃除やちゃんこづくりが始まりました。でもそれはたいしたことじゃなかった。いちばん大変だったのが、先輩と後輩の文化。エジプトにはないから。それとすごく難しいのが「すみません」の文化。例えば、机から書類が落ちたときに、「何で落ちた?」と聞かれて、ぼくは「ああ、それはぼくがこうやっていたら、こうなって、ああなって、それで落ちたんです。ごめんなさい」と言います。すると、親方は「まず最初に謝れ」と。でも、最初に理由をいうのが小さい頃からの文化ですから、なかなかできない。毎日怒られました、1年間。今では、書類が落ちる前から「すみません」って言いますよ(笑)。

日本で暮らしていて難しいなとか大変だな、ということはいっぱいあります。でも、そこには理由があるんです。それがわかっているから、いやじゃない。リスペクトできます。
若い人たちにいいたいのは、自分と違うことを「変だ」とか「びっくりした」だけじゃなくて、ちゃんと見てほしいし、インターネットとかテレビからの情報を鵜呑みにするのではなくて、自分の目で見てほしい。目と心を開いて、もっといろんなことを学ぶといいと思います。

エジプト出身で初の横綱になるという夢を実現するためにとにかく日本でがんばるだけです。今のぼくにとって大事なことばは日本語です。大好きなことばは「よろしくお願いします」。これはアラビア語にはないです。フレンドリー、ピースを表していて、どんなときにも誰にでも使えます。すごくいいことばです。