今年のモデルは前からお母さんと一緒に入学した、「広汎性発達障害」をもっているゆりあちゃんにしようと決めていた。その理由を考えてみればいろいろと思い当たることがある。加奈は中国から来たとき(9年前に中国黒竜江省から来日)全く日本語を話すことができなくて、凄く寂しい想いをしたことがある。その時まわりの人と違って日本語を話せない自分は自分で障害者だと思っていた。そんな加奈にまわりにいた先生や友達は凄く優しくわかるまで教えてくれたことが加奈のなかで日本に来て一番嬉しかったことだった。だから日本語ができるようになったら自分も自分みたいに障害をもっている人を助けようと決意し、たまたま同じクラスに障害を持っている子がいて、その子のことをできる範囲面倒を見た。その子の喜ぶ顔を見て、加奈は自分にでも人の力になれるんだなーって実感した。
ゆりあちゃんについての印象はいつもお母さんと一緒にいる凄く仲のいい親子だった。ゆりあちゃんは1年の途中に加奈もお母さんもいるクラスに変わってきた。その時お母さんがゆりあちゃんの病気についてみんなに話した時に加奈は凄く感動した。一緒に頑張って大学に行くのが夢だって言われた時はほんま親子の絆を感じ、この親子を尊敬するようになりました。はじめてお母さんにゆりあちゃんを撮らせてくださいと頼んだ時、お母さんは快くOKしてくれました。
加奈は昼間働いているので撮影する時間があまりない。だから、他の部員より早くから撮影を始めていた。最初はゆりあちゃんと接点がなくどういうふうに接していいのかわからなかった。そんな時たまたま選択授業が一緒になって加奈はその時から徐々にゆりあちゃんに近づいていった。その授業で初めてゆりあちゃんの声を聞き、益々ゆりあちゃんに近づきたいという想いで、いっぱいゆりあちゃんに声をかけました。最初は全然返事がなかったのに今では加奈が質問したことまで答えてくれるようになりました。そして笑ってくれるようになって毎日毎日ゆりあちゃんに会うのが楽しみになっていました。撮影をしていてもカメラ目線で笑ってくれたりポーズをとってくれるようになって凄く嬉しかった。加奈も凄く撮りやすくなった。
撮影はほとんど学校だった。ゆりあちゃんは学校以外にも頑張っている、と聞いてお母さんに「そんなゆりあちゃんも見てみたい」って言ったらいろんな所へ連れて行ってくれました。ゆりあちゃんは学校では真面目に勉強している上、学校以外では掃除や洗濯も頑張っていた。誰よりも早く最後までやっているのを見て、凄く素敵で努力家だなーと思った。
いろんなゆりあちゃんを撮ってきて気に入ったコマをキャビネに焼き、何百枚の中から5枚に絞り込むのが大変だった。どのゆりあちゃんも凄く可愛かった。撮影を通して今まで見たことのない凄く素敵な笑顔や、普段は全くしゃべらないのに加奈の問いかけに嬉しそうに応えてくれる姿など今までの障害があるイメージとは全く違ったゆりあちゃんを発見することができた。
五枚をバライタ紙にプリントするのに凄く苦労しました。寒い暗室の中にこもり納得するまで先生のアドバイスを受けながら頑張ってプリントした。明るさの調整が難しく、いっぱいプリントした。ようやくできあがった作品を見て苦労した甲斐があったなーと思った。そして加奈は写真という道具のおかげでゆりあちゃんと仲良くできた。担任の先生に、「こんなに笑っているゆりあを初めてみた」と撮影しているときに言われてとても嬉しかった。写真は本当に凄いと思った。加奈の中ではただのクラスメイトから親友になっていった。全然しゃべってくれへんかったゆりあちゃんやのに、今ではちょっと会話もできるようになって、これからのゆりあちゃんの成長をそばでそっと見届けていたいと思った。
努力家のゆりあちゃんなら絶対大学へ行けると思います。自分にできることがあったら力になってあげて、さらに仲良くなりたいです。加奈は今でも外国人というだけで心に壁を感じます。加奈はゆりあちゃんに努力をすれば報われるということを教わった。そんなゆりあちゃんと一緒に卒業したいです。ゆりあちゃんは将来、素敵な女性になれると思います。
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