「めやす」の「言語運用レベル」はどのように決めたのか
「めやす」の言語運用レベルについては、欧米の先行研究を参考にしながら、日本の高校から大学の状況に合わせて、独自に1から4までの4段階の「言語運用能力指標」を、3つのコミュニケーション・モード(対人、解釈、提示)で設定しています。各レベルがどの程度の能力を想定しているのでしょう。
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【言語運用能力指標】
レベル1
学習した基本的な語彙や表現を使って簡単な言語機能を果たせるレベル。
- 自分が想定している範囲で、基本的な言い回しを使って、相手の協力を得られれば簡単なやりとりができる。(対人)
- 自分にとって身近な事柄について、短い語句や文で表現することができる。(提示)
- よく耳にしたり目にしたりする語句や文のうち、ごく基本的なものを理解することができる。(解釈)
レベル2
学習した語彙や表現を使って、想定内の言語活動を行なえるレベル。
- 自分が想定している範囲で、学んだ語句や文から選択して、相手の協力を得られればやりとりができる。(対人)
- 自分にとって身近な事柄を、短い語句や文を並べて表現することができる。(提示)
- よく耳にしたり目にしたりする語句や文を理解することができる。(解釈)
レベル3
想定外の状況でも、助けを借りて言語活動が行なえるレベル。
- 自分が想定していない状況においても、学んだ語句や文を使って、相手の協力を得られれば、ある程度創造的なやりとりができる。(対人)
- 自分の身の周りや関心のある事柄について、ある程度まとまった内容を、趣旨が通じる程度に表現することができる。(提示)
- ある程度まとまった内容を、辞書の助けを借りたり、事前に関連情報を得たりして、理解することができる。(解釈)
レベル4
想定外の状況で、言語を創造的に使い、複雑な言語活動もできるレベル。
- 自分が想定していない状況においても、ある程度創造的なやりとりができる。(対人)
- より広い範囲の事柄について、少し複雑かつ抽象的である程度まとまった内容を、より正確で適切な語句や文を使って表現することができる。(提示)
- ある程度まとまった内容を理解することができる。(解釈)
言語運用能力指標とコミュニケーション能力指標の関係
言語運用能力指標をもとに、学習対象言語の特徴を考慮しながら、15の話題分野別・4段階の言語運用レベル別に作成されたのが、【コミュニケーション能力指標】です。コミュニケーション能力指標が内容標準(何ができるかを提示)であるのに対して、言語運用能力指標は能力標準(どのくらいできるかを提示)であるので、両者が相まって「できる」の内容と到達度を示すことになります。
因みに、日本の高校の隣語教育の現状では、「めやす」の言語運用能力レベル1および2が目標として一般的であると思われますが、レベル3および4をめざす高校もあることと、「めやす」としては「高校から」大学・その他も視野に入れており、4段階にレベル設定となっています。
注:
言語運用能力指標のレベル1と2を、以下3つの外国語運用能力基準に照らすと、①のNovice Low/Mid、②のBeginning/Transitional Level、③のA-1/A-2(基礎段階の言語使用者)レベルにおおよそ相当します。
- Proficiency Guideline, ACTFL( American Council on the Teaching of Foreign Languages), U.S.A. 1986(全米外国語教育協議会の学校教育用4技能言語運用能力基準)
- Japanese for Communication, A Teacher's Guide, Wisconsin DPI, U.S.A 1996( 米国ウィスコンシン州教育庁編『日本語教育用カリキュラムガイドライン』)
- CEFR(Common European Framework of Reference for Languages, Council of Europe 2001. 外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠)
執筆者
1987年6月に講談社、王子製紙、大日本印刷、凸版印刷、日本製紙、三菱東京UFJ銀行、計6社の出捐によって設立された事業型財団で、2011年4月に公益財団法人移行しました。国内外の学校、教師、行政機関、民間団体と連携して、日本と海外の子どもたちが互いのことばと文化を学び、交流する場をつくる事業を中心に行っています。
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