教科書調理法
文法シラバス、機能シラバス、場面シラバスとさまざまなタイプの外国語学習用の教科書があれど、自分の学習者にぴたりのものが少ないと嘆く教師が多い。教科書「を」ではなく「で」教えることが大切だとよく言われているが、「めやす」では、教科書をアレンジして使う「教科書調理法」を勧めている。
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外国語のクラスでは、自分で開発した教材を使うことも可能ですし、市販の教科書を使うこともできます。
市販の教科書を使うと自分で作る教材の量を減らしたり、負担を減らすことができるという利点があります。教科書には副教材がついている場合も多く、教師、学習者に多くのリソースを提供します。また、カリキュラムのシラバスを決め、コースに構造を与えるためにも役立ちます。
よい教科書には学習者が必要とするよいインプットやよい例が含まれており、対象言語の母語話者でない教師にとっては、授業運営の助けとなる働きもあります。長い間使われてきた教科書には、教師のフィードバックが反映されていて、使いやすいことも多いものです。
しかし、いろいろな教科書を眺めてみると、実際に使われている表現とは異なる表現例が出ている場合があります。教育のために単純化されたり、特定の文型を教えるために、その文型がくり返し出てきて不自然となっていることも多いものです。文化についても一部しか取りあげていなかったり、現実を美化あるいは一般化しすぎる傾向もあります。理想的な学習者を対象に書かれていることが多く、目の前にいる学習者のニーズを反映していなかったり、クラスの学習環境にぴったりと当てはまらないことのほうが多いのも事実です。
このような問題点を克服して、教科書を使うためには、どうしても教科書の内容を使いやすい形に変更する「教科書のアダプテーション(適応)」が必要となります。目標に適った教科書のアダプテーションを行なうことにより、教科書を使う意義が高まります。
カリキュラムを作る際には教科書から出発するべきではありません。まず自分のカリキュラムで何を達成したいかという目標をコミュニケーション能力指標をもとに立て、その目標を達成するのに一番いい内容の教科書を選ぶことになります。自分の教育理念や教育目標を完全に満たす教科書を見つけることは困難なものです。まして「めやす」のような新しい教育の考えを反映した教科書はいまのところないので、当然のことながら教科書のアダプテーションが必要となります。
※「外国語や学習のめやす」p.56より抜粋
執筆者
1987年6月に講談社、王子製紙、大日本印刷、凸版印刷、日本製紙、三菱東京UFJ銀行、計6社の出捐によって設立された事業型財団で、2011年4月に公益財団法人移行しました。国内外の学校、教師、行政機関、民間団体と連携して、日本と海外の子どもたちが互いのことばと文化を学び、交流する場をつくる事業を中心に行っています。
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